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2009-10-30

[]「ユーザーの立場に立つ」という事 03:13 「ユーザーの立場に立つ」という事 - いつか作ります を含むブックマーク はてなブックマーク - 「ユーザーの立場に立つ」という事 - いつか作ります 「ユーザーの立場に立つ」という事 - いつか作ります のブックマークコメント

真にユーザーの立場に立とうとした場合、最も極端な場合には、ユーザーの声を全て無視する事もあり得る。

格闘ゲームのおはなし

大昔、格闘ゲーム「ストリートファイター2」が現れたときは凄かった。そりゃあもう、全世界の若者がスト2をプレイしてるんじゃないかってくらい、どいつもこいつもスト2をやってた。で、そのうち「爽快感がない」っていうユーザーの要望が高まってきて、いわゆる超必殺技を持つ格闘ゲームが台頭してきた。さらに、「スピード感が足りない」という要望もあり、どんどんゲーム速度は上がっていった。「駆け引きの要素が足りない」と言われブロッキングの仕組みが導入され、「スリルが足りない」と言われ一撃必殺の仕組みが導入され、「単調すぎる」と言われ複雑なキー入力でコンボが繋がるようになり、「平面的すぎる」と言われ空中コンボの仕組みが投入され、「1キャラでは飽きる」と言われチーム制が導入されていった。

ふと気づくと、そこにユーザーは殆どいなくなっていた。あれほどいた、スト2プレイヤーたちはどこかに行ってしまっていた。ゲームはユーザーの声を真摯に聞き、ユーザーの声に答える形で進化してきたというのに。

ガラパゴス化

既存ユーザーの声を聞いていると、必然的にこのようなガラパゴス化現象が発生する。

「ガラパゴス化」というとケータイ市場を思い出すが、ここも似たようなもの。新規契約が頭打ちになったと思われた時点で、各キャリアは勧誘競争から、既存のケータイユーザーのライフスタイルの変化に合わせモデルチェンジを繰り返し、互いにユーザーを奪い合う道を選び始めた。

ここに欠けていたのは「新たなユーザーを獲得する」という視点。この時点で海外に目を向けていれば、多様なユーザーに対応するためにケータイは多様化の道を取ったかも知れない(例えば日本のケータイは「電車の中で操作する」事に特化したデザインになっているが、これは偶然起きた進化ではない)。あるいは国内で新たなユーザーを獲得しようと考えていたならば、らくらくホンやディズニー携帯のような新たなセグメントを掘り起こす道をもっと積極的に展開していただろう。

既存ユーザと新規ユーザ

既存ユーザーの声を聞いた場合、もっとも良く聞こえてくるのは「多機能化しろ」という声である事が多い。既存機能にはもう飽きた。既存機能には柔軟性が乏しい。そう言って彼らは多機能化を迫る。

あるいは逆に「シンプル化」を主張する場合もある。自分たちが良く使う機能を、もっと簡単にアクセスできる位置に。階層メニューとか面倒だよ。トップに持ってきておいてよ。ほら、そこのヘッダ部分開いてるじゃん。適当なアイコンでリンクしてよ。説明とか要らないし。ボタンももっと増やそうよ。

サービスは誰のために

既存の顧客のためだけに全コストを費やし、既存顧客の意見を全て受け入れシステムを発展させていく。確かにそれは「ユーザーのため」に見えるかもしれない。

しかしそのために、「ユーザーになるかもしれなかった人々」に不便をかける事は許されるのだろうか。

「新規ユーザーに媚び、既存ユーザーに背を向ける姿勢」というのは、そんなに悪い事なのだろうか。

新規ユーザー(もしくは見込みユーザー)と既存ユーザーを比べて、どちらが大事と言えるものだろうか。

仮に、ものを作る人々の使命が「世界をより良くすること」だったとして。既存の顧客の満足度を高める事と、まだ顧客になっていない人に新たにサービスを提供する事、どちらが「世界をより良く」しているだろう。

既存ユーザーの意見はよく聞こえるが、新規ユーザー(もしくは、そうならなかった人)の意見は小さすぎて、耳を澄まさないと聞こえない。

ガラパゴス化の末路

格闘ゲームの例を挙げたが、奇形な進化を遂げたものは、ユーザーを減らしていき、滅亡への道を歩む事が多い。音ゲーやシューティングなど、似たような例はそこらじゅうで見つける事ができる。

ユーザーは自然に減少すると同時に自然に増加する。「ユーザーが右肩上がりに増える」とは、「ユーザーが増える一方」という事を意味しない。それは「ユーザーは減っているけど、それ以上の勢いで新たなユーザーが増えている」という意味なのだ。「もう規模はじゅうぶんだ、新規ユーザーなんて不要だ、既存ユーザーに奉仕して理想郷を作っていこう」。そう考えた瞬間、そのサービスは縮退をはじめ、そして予想以上に早く消滅する。奉仕しようとした既存ユーザーをも巻き込んで。

フォードの馬

もし私が顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えていただろう。

- ヘンリー・フォード

それに加えて、ユーザーは自分が欲しいものすら実は知らない。

実際俺も、ニコニコ生放送に関しては大きく読みを外した*1。そもそもキモヲタの俺はニコニコ生放送のターゲットとなったリア充高校生とは違う生き物だから仕方ないとも言えるが(「既存ユーザーの声は新規ユーザー開拓の役に立たない」という一例だろう)。世界の新着動画も参加するまでどこがどう面白いのか、どう遊ぶものなのかまったく想像できなかった。

おわりに

運営は、何も分かっていない。同じくらい、ユーザーも何も分かっていない。そりゃそうだ、目指している場所が「あさっての方角」なんだから。見た事がないものなんて誰にも分かりゃしない。

結局は数打ちゃ当たる式に、作っては壊し、ユーザーの声を聞いて改良し、たまにリセットしてまた調整し、を繰り返していくしかないのだろう。「何を作るか」だけじゃなく「どう作るか」まで含めて。

それでも、きちんとプロフェッショナルに分析し設計し洗練させていけば、順当に進化させる事は多分可能なんだろうし、それは多分それなりにみんなに無難にウケるんだろう。でも、俺にはそんなサービスが好きになれるとは思えない。世の中にひとつ位、いつ見てもみんなを置き去りにして意味不明な事をしているような、変なサービスがあったっていいんじゃないか、と思う*2

そもそも、あんな大赤字のサービスを何年も運営している事自体、正気の沙汰ではない。「お前らバカか?」ってそりゃパーフェクトなバカなんだろうよ。⑨だしな。

ああでも、ユーザビリティテストと既存ユーザーのモニタリングにはもうちょっと時間とコストを割いてもいいと思うの。

*1:ニコニコββ勝手に考察 - いつか作ります - 断片部 http://fragments.g.hatena.ne.jp/fukken/20081205/1228427287

*2:そういやどこぞの「へんな会社」も最近はずいぶん小奇麗にまとまっちゃったねぇ

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