2010-08-02
■ 「まぜるな危険」の反応式

一部写経。高校化学の復習も兼ねて。TeX記法が面倒だったのでスーパーpre記法で。
おさらい
塩素系漂白剤と酸性洗剤の反応
結論:酸化還元反応により塩素が発生する。
NaClO は弱酸である次亜塩素酸 HClO と強アルカリである水酸化ナトリウム NaOH の塩である。そのため、NaClO に強酸である HCl を反応させると、弱酸である HClO が遊離する。
NaClO + HCl => HClO + NaCl (1)
遊離した HClO と HCl は、次式のような平衡により、一部が塩素 Cl2 となる。
HClO + HCl <=> Cl2 + H2O (2)
(2)の左辺から右辺へ向かう反応は酸化還元反応である。HClO (ClO-) が酸化剤、HCl (Cl-) が還元剤である。それぞれの半反応式を書くと次のようになる。
ClO- + 2H+ + 2e- => Cl- + H2O (3) 2Cl- => Cl2 + 2e- (4)
(3)+(4)より(2)が得られる。
(2)の平衡は、酸性条件では右に偏る。すなわち、次式の反応が進行する。
HClO + HCl => Cl2 + H2O (2)'
酸性洗剤を大量に注いだ場合、酸性条件により(2)'の反応が進行する。よって、(1)+(2)'より、塩素系漂白剤と酸性洗剤の反応式、すなわち「まぜるな危険」の反応式を得る。
NaClO + 2HCl => NaCl + Cl2 + H2O (5)
塩素系漂白剤と酸素系漂白剤の反応
結論:酸化還元反応により酸素が発生する。
H2O2 は、反応する相手によって、酸化剤にも還元剤にもなる。それぞれの半反応式は次のようになる。
酸化剤の場合 H2O2 + 2H+ + 2e- => 2H20 (6) 還元剤の場合 H2O2 => O2 + 2H+ + 2e- (7)
相手が HClO の場合、H2O2 は還元剤として働く。したがって、(3)+(7)より、次の半反応式を得る。
ClO- + H2O2 => Cl- + O2 + H20 (8)
(8)の両辺に Na+ を加えて、塩素系漂白剤と酸素系漂白剤の反応式を得る。
NaClO + H2O2 => NaCl + O2 + H2O (9)
疑問(とそれに対する自分なりのざっくりとした考え)
(2)の平衡はなぜ酸性条件で右に偏るのか
酸性条件ってことは H+ がたくさんあるので、それを減らす方向(つまり左から右)に反応が進む。
塩素系漂白剤に HCl でない強酸を反応させた場合でも Cl2 は発生するか
発生する、と思う。
NaClO と強酸の反応:
NaClO + H+ => HClO + Na+ (1)'
HClO の不均化:
2HClO => 2HCl + O2 (10)
(1)'×4+(2)'×10+(10):
4NaClO + 4H+ => 2Cl2 + O2 + 4Na+ + 2H2O (11)
強酸が希硫酸 H2SO4 だとしたら、(11)の両辺に 2SO4-- を加えて:
4NaClO + 2H2SO4 => 2Cl2 + O2 + 2Na2SO4 + 2H2O (11)'
塩素系漂白剤と酸素系漂白剤の反応において、なぜ H2O2 は酸化剤ではなく還元剤として働くのか
分からん。
塩素系漂白剤と酸素系漂白剤の反応において、(8)の式で発生した Cl- が HClO と反応して Cl2 が発生することはないのか
発生するかもしれないけど、シュワシュワ発生することはなく、せいぜい塩素系漂白剤が何とも混ぜられずに置かれているのと同じ(=平衡状態)程度、だと思う。
(2)'にあるようにこの反応は可逆。そして NaClO 水溶液は強アルカリ性(弱酸と強アルカリの塩の水溶液なので)、H2O2は弱酸性なので、両者を混ぜても酸性条件にはならない。すなわち、反応が右に傾くことはなく、Cl2 がシュワシュワ発生することはない。
これで正しい?
指摘求む。
酸化還元電位というのを調べてみるとちゃんと理由が説明できると思います