Hatena::Groupfragments

甘くておいしいおイモだよー このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-12-23

コミックギア出版中止も決まったことだし言及しておくか コミックギア出版中止も決まったことだし言及しておくか - 甘くておいしいおイモだよー を含むブックマーク はてなブックマーク - コミックギア出版中止も決まったことだし言及しておくか - 甘くておいしいおイモだよー

創刊前創刊直後第二号発売直前と言及し続けてきたコミックギアだけど、第三号出版中止も決まったことだし、またまた言及をしておく。

出版中止が決定する直前まで「マンガ誌」という羊頭をおろさなかったコミックギアは最後の最後まで害悪だった(出版中止が決定した瞬間に「商業流通させる」という条件が偽になったので害悪ではなくなったが)。新しい作家もついに登場しなかった。それ以前に「東京都練馬区にある制作スタジオに通える方」という条件で果たして何人の作家の応募があっただろうか。

コミックギアの一連の話題から連想した漫画本がふたつある。ひとつはコミックギアと同じく芳文社から刊行されている百合アンソロジー『つぼみ』。刊行を重ねるごとに新しい作家が登場し、新陳代謝が機能しているこのアンソロジーは、「マンガ誌」を標榜するコミックギアよりもよっぽど雑誌然としている。もうひとつはメディアックスから刊行され、第一号で休刊した4コマ誌『まんがドカン小町』。収録作品24作品のうち少なくとも10作品が同人作品あるいはウェブコミック作品の再録で構成されていたこの雑誌は、同人然とした点こそコミックギアと同じだが、作品の多様さはコミックギアよりもはるかに上だった(もちろん、作品の絶対数がコミックギアと比べて多いことは加味されるべきだろうが)。

「コミックギアは芳文社編集部の実験だった説」は、前述した『まんがドカン小町』のように、同人作品がそのまま商業誌に登場することが増えてきた流れを受けて掲げたものである。ドカン小町掲載作品以外では、大沖ひらめきはつめちゃん」、水月とーこ「がんばれ!消えるな!!色素薄子さん」などが挙げられよう。また、関連する流れとして、小坂俊史重野なおき『ふたりごと自由帳』や、むんこ・曙はる『妹本』のように、同人作品が商業単行本として刊行されてきていることも見逃せない。こういった流れをちょっとひねったものとして、同人身内で新しい作品を制作し、編集者は極力介在しないというスタイルのコミックギアがあったのかもしれない。

仮に実験説が正しかったとするならば、編集者の本当の仕事はここから始まる。コミックギア制作の方法論が立ち行かなくなった理由を精査し、方法論の改善と次の適用先を考えるか、あるいは方法論の不可能性を示せなければ、コンテンツとしてのコミックギアは犬死にしたも同然だ。そのようなことは、制作陣からはもちろん、編集上層部から見ても許されることではないだろう。

制作陣のリーダーたるヒロユキ氏についても言及しておく。コミックギアにおけるヒロユキ氏の立場は、かつてのヤクルト選手兼任監督古田敦也氏のそれと似ていた。ある時は他のチームのメンバーと同じ高さに立ってともに戦い、またある時は一段高い場所に立って全体を見通し采配を下す立場だ。この立場で最も苦しいことは、自らをメンバーの一員として採用することがチーム全体の敗北につながりかねない場合に「自らをメンバーとして採用することを控える」という采配を下すことに他ならない。ヒロユキ氏がそのような采配を行えていたか否かは、方法論の一部分としてコミックギアに関わった編集者が最も関心を抱く点のひとつであろうし、さらに言えば自らの進退にも関ってくることだろう。編集者と制作部は強力な共犯関係にあったわけだから、よもやコミックギアの失敗を全てヒロユキ氏に押しつけて編集者は知らぬ存ぜぬを決め込むなどということはあるまい。

最後に。これまで散々言いたい放題言ってきた私であるが、コミックギア本誌は買ってもいないし、立ち読みや借り読みすらしていない(本誌の内容の良し悪しについて述べるなら「買え」「読め」と言われるところだろうが、これまで私はその点には全く触れていないので、問題は無いと考えている)。そんな私だが、このブログでの語りやそれを媒介としたコミュニケーションは大いに楽ませていただいた。これらはコミックギアの周辺コンテンツと考えることもできるだろう。ところで、最近はウェブで無料で読めるコミックでも、書籍化されれば売れに売れるという現象が散見される(松本ぷりっつうちの3姉妹」がいい例だろう)。私は、読者が「無料で手に入るものにお金を払う」のは、「コンテンツそのものだけでなく、ムーブメントに参加しているという実感を買う」ためだと考えている。インクの乗った紙だけでなく、それを読み・語り・楽しむというエクスペリエンスまで含めて「漫画」なのだ。これを逆に考えると、周辺コンテンツを大いに楽しんだ私は、実はコミックギアにお金を払ってもいいんじゃないかとも思えてきたりするから面白い。コンテンツではなくエクスペリエンスを売る「マンガ誌」というのは今までにあまりなかった試みで面白いんじゃないかという放言を残して、この記事を締めたいと思う。

トラックバック - http://fragments.g.hatena.ne.jp/SweetPotato/20091223