planet ギエディ・プライム

2009-01-11

チェルノブイリ以後

| 01:37

チェルノブイリ以後」という視点について考えてみたい。

これは、以前2008-05-23 - planet カラダンで書いたことでもあるんだけど、もっと深められたらと思っていたので。

しかし直視しなくてはならない。こうした大惨事において人道主義が直面する限界を。どす黒く口を開けて北半球を汚染する炉心にフタをせねばならない。あまりに高レベルの放射線量のため、ロボットという最適解を放棄し「バイオロボット」を動員せねばならない。そのとき私たちは「(おのおの個別性を備えた)比類なき人間」「生命の比較不可能性」という言葉とどう折り合いを付ければいいのか。いや違う、これは仮定の話ではなく20数年前に実際に行われたことだ。だから今、アウシュビッツ以後にしてチェルノブイリ以後の私たちが「比類なき人間」という理想を口にするとき、その言葉に豊かな内実を保証することは可能なのだろうか?

自己欺瞞について

ここでいう「自己欺瞞」は、「自分の良心に反する」というような意味。

となると「良心」っていうのはなんだ? ということになる。本当に「良心」なるものを信じていいのか? それはある種の「教義」ではないのか?

この疑問は重要だし、難問だと思う。「良心」はひとりひとりの内面の問題だから、それがどういう働きをするのかということをモノのように論じることはできない。ここについてうまく整理することはできないんだけど、とりあえずここではカント実践理性批判」で有名な「内なる道徳律」でごまかしたい。

 

「内なる道徳律」が意志を規定し、人は「すべき」を得る。共感や同情から他人に対して何か働きかけるとき、「こうしたい!」と思うからそうするはず。例えば、隣の席の人が消しゴムでも落として探してるとき、自分が先に見つけてたら教えてあげるなり拾ってあげるなりするとか。そして時に、そういう良心の声「こうしたい!」を裏切ることがある。

先日、そばを走り抜けて行った人が小さなハンカチみたいのを落としていった。持ち主は気づいてないでどんどん遠ざかって行く。その人が「どっかでハンカチ失くした!」とあとで気づいて困らないように、拾って追いかけるとか、大声で呼び止めるとかするべきだと思った。でも、私はなんだかすぐに体が動かず、なんだか行動を起こしあぐねている*1間に、持ち主は遠くなってしまってさっさとあきらめた。こんなハンカチくらいまあどうでもいいか、と勝手に自分を(自分の良心の声を)納得させて、ほっといた。これが自己欺瞞ということ。

「すべきでない」と思うことをする場合

そして、こういう場面のかなり極端な例を想定する。例えば、自分にとって特別に大切な人*2が重い病気で体動かないとかいうとき、できる限りの手助けをしたいと思うだろうし、実際にやると思う。そして、人への共感、ということが道徳律の大きな要素であると思われるから、赤の他人であってもそれを「なんじ」*3と捉えるならば、「特別に大切な人」へのと同様の対処を「すべき」と思うのではないか。いや、親しい人とそうでない人なら介入の度合いに程度の差はあるかもしれないから、ここでは対処の内容云々ではなく、根本的な方針として「(なんらかの)手助けをすべき」だけでいい。そしてこういう「すべき」を極度に一般化して裏返らせたものとして、究極の「すべきでない」が、「生/死」に関わるものとして出てくるだろう。つまり「見殺しにするべきではない」というような。

なにもわかってなさそうな幼児が崖に向かってよちよち歩いて行く。止めるも止めないも自由だけど、その自由の期限はまさにその幼児が崖から落ちて死ぬ瞬間までしかない。

しかしこれとは逆に、ある人たちを積極的に崖っぷちへ追い立てなければならない状況があった。それがチェルノブイリの事故処理。

4号炉のあった建屋周辺の清掃*4に、当初はロボットを使っていたが、あまりの高レベルの放射線量のためにロボットは動かなくなった。そこで予備役の若者が大勢投入された。

放射線量と人的被害の相関関係について不明な点が多かったり、また現場の末端まで十分に周知されていなかったにしても、やはり極めて危険な任務であるということは十分に自覚されていた。送り出す側にも送り出される側にも。だからこそ鉛の装備を用意したり、一人の一回当たりの作業時間を数分間に決めるなどした。

こういうあまりにも危険な任務が必要な状況と、そこに送り出す側の葛藤を思うとき、この事故処理は倫理的にも大きな課題を突きつけたし、歴史的にも重大な出来事だったと思う。

あんなところに人を送り込むべきではないということは、ごく当然の良心の声として感じられたはずだけど、それをもっと「大多数の安全のため*5」にとねじ伏せないといけなかった。



(つづく)

断片部はじめて

| 23:57

最近、全然ぶろぐ書こうって気にならない。

けど、ちょっと思いついたことはメモっておかないと忘れてしまうのでここに。

下書きに使うのもいいかもしれないし。

*1:ほんの一瞬のうちのことだけど

*2:恋人とか親兄弟とか

*3:ブーバーの「われーなんじ」の観点を唐突に利用

*4:爆発で飛び散った汚染物質の除去

*5火災の続く炉心からでる放射能が北半球を広範囲に汚染していた